脂肪幹細胞治療とは?【治療内容、メリット・デメリット】

近年、整形外科領域でも認知度が広まってきた再生医療、主に臨床で用いられているものには、PRP治療と脂肪幹細胞治療があります。

その中でも今回は、脂肪幹細胞治療がなぜ関節の痛みの改善に効果的なのか、どのような仕組みで効果が出るのか、治療の流れなどについて、まとめてみました!

既存のヒアルロン酸注射などの保存療法では十分な治療効果が得られなかった方に対して、救世主となりうる画期的な治療法ですので、少しでも気になる方は最後まで目を通していただくと良いかとおもいます!それでは初めていきましょう!

脂肪幹細胞治療ってどんな治療なの?

そもそもまず、皆さんは「幹細胞」の意味を知っていますか?

人間の体は約60兆個にも及ぶ、さまざまな種類の細胞が集まってできていますが、僕ら人間は生まれる前は、母親の卵子というたった一つの細胞でできていたはずですよね。

成長する過程で、さまざまな機能を持つ細胞に分化していくわけですが、その過程でさまざまな種類に変化することができる細胞というものが存在します。これがいわゆる「幹細胞」です。

この「様々な細胞を作り出すことのできる力」を関節疾患の治療に利用し、組織を修復して軟骨を保護したり、炎症を抑えて痛みを改善させるための治療が、「脂肪幹細胞治療」です。

再生医療の中でも最も普及しているのが「脂肪幹細胞治療」

幹細胞といっても、幹細胞の中での種類があります。

例えば、骨髄由来幹細胞や滑膜由来幹細胞、iPS細胞やES細胞なども幹細胞です。

その中でも皮下脂肪内に存在する「脂肪幹細胞」が最も実臨床で利用されている幹細胞となります。

脂肪幹細胞治療の中でもさらに、培養幹細胞(ASC治療)と培養しない幹細胞治療(SVF治療)の2種類があります。

当院で扱っているのは、培養脂肪幹細胞(ASC治療)と呼ばれるものとなります。

それぞれメリット・デメリットがあるので下にまとめています。

メリットデメリット
培養しない幹細胞(SVF)幹細胞以外の細胞も含まれており、多彩な成長因子の恩恵を受けられる可能性がある。投与できる幹細胞の量が少ない、または調節することが難しい。
培養幹細胞(ASC)投与する幹細胞の量を調整できる。脂肪の採取量が少ないので低負担。幹細胞の最適な量についてコンセンサスが得られていない(多いことが弊害になるケースもあり)。

培養しない幹細胞(SVF)を用いるメリットとデメリット

培養しない脂肪幹細胞(SVF)治療で使う幹細胞は、皮下脂肪内の数多くある脂肪細胞の中に点在する幹細胞そのものを使う治療法です。

この治療は脂肪幹細胞のみを取り出して治療することはできず、通常の脂肪細胞やその他細胞、成長因子や各種サイトカインなども混ざったものを関節内に投与する方法です。

メリットは培養をしないので、脂肪採取から関節内投与まで時間がかからないこと、最短1日で治療を終えることができます。

デメリットは、採取する脂肪の量が相対的に多くなること、その割に得られる脂肪幹細胞の総数が少ないことです。

脂肪の量がもともと少ない方だと、治療に十分必要な量の脂肪幹細胞が採取できないこともあります。

培養する幹細胞(ASC)を用いるメリットとデメリット

培養脂肪幹細胞(ASC治療)は、少量の皮下脂肪を採取するだけで培養により数をふやすことができるので、患者様の体にかかる負担を少なくて済みます。

これがSVF治療に比べて最大のメリットとなります。

当院では下腹部の臍部下部の皮下脂肪を1cm程度の傷口で脂肪を採取します。

SVFでは皮下の脂肪を吸引によって多量に採取しなければならず、手術時間もかかりますし、合併症のリスクもあります。

また、脂肪幹細胞を培養によって増幅するために、幹細胞の数が圧倒的に多いです。

そのため関節内で炎症を抑えたり、組織を修復する効果がより期待できるという報告があります。

培養幹細胞治療(ASC治療)の治療効果について

当院では主に、変形性膝関節症や半月板損傷の患者様に対してASC治療を行っております。

治療開始1ヶ月後程度から疼痛症状の改善が見られ始め、その後1年間にわたって疼痛の改善が見られるケースが多いです。

変形性関節症に関しては、初期から中程度の症状の方の方が、進行している方に比較して効果が出やすいことがわかっています。

変形や損傷の程度が軽度である方が、疼痛軽減効果は高く、また持続期間も長い傾向にあります。

培養幹細胞治療がKOOSに与えた影響

培養脂肪幹細胞治療は疼痛の改善だけではなく、軟骨保護作用があるという報告もあります。培養脂肪幹細胞投与によって、膝関節の軟骨が厚くなったという報告もあります※

痛みを軽減するだけではなく、損傷した軟骨の修復を促す効果も期待される治療であり、従来の保存療法と比較しても、新たな関節治療の可能性を感じさせる治療であると考えられますね。

培養幹細胞がひざ軟骨に与えた影響

培養脂肪幹細胞で重要なのは、幹細胞の質と培養技術

培養脂肪幹細胞治療の結果を左右する要因として最も重要なのは、関節内に注入する細胞の質です。

SVF治療のように様々な細胞が混在しているのが前提の治療とは違い、培養脂肪幹細胞治療は、いかに質の高い細胞を培養できるかが鍵となります。

  • 培養脂肪幹細胞の数が十分に増幅されていること
  • 関節内投与後に組織にしっかり定着し、治療効果が高い細胞を培養すること

当院には、院内に「SBC再生医療センター」を設置しております。

脂肪幹細胞の培養自体は院外の設備で行いますが、培養脂肪幹細胞治療の他、APS治療、PRP治療、PDF-FD治療など複数の再生医療を患者様それぞれの状態に合わせて最適な治療提案ができる体制が整っております。

培養脂肪幹細胞治療のリスク・デメリット

培養脂肪幹細胞治療は自分自身の細胞を使用した治療なので、他の医療行為や治療薬と比較すると安全性は相当高い治療となります。

ただ、小さい傷で済むとはいえ、局所麻酔を使った皮膚切開を伴う手術が必要であるため、感染や出血、神経損傷等のリスクはゼロではありません。

人工関節手術に比較すれば圧倒的に低リスクに済む治療ではありますが、不安なことがあれば個別に詳しく説明させていただきますので、当院へご来院いただいた上でご相談お待ちしております。

治療のデメリットは、治療効果には個人差があるということ、保険診療外の治療であり治療費が高額になることが挙げられます。

そのため治療を開始する前に、治療効果が十分に見込める状態なのかどうかについて、診察及び検査を行うことで確認を必ず行いますので、まずは相談いただければと思います。

参考

  1. [2]Yokota N, et al.: Comparative Clinical Outcomes After Intra-articular Injection With Adipose-Derived Cultured Stem Cells or Noncultured Stromal Vascular Fraction for the Treatment of Knee Osteoarthritis. Am J Sports Med. 2019: 47, 2577.
  2. [9]Pers YM, et al.: Adipose Mesenchymal Stromal Cell-Based Therapy for Severe Osteoarthritis of the Knee: A Phase I Dose-Escalation Trial. Stem Cells Transl Med. 2016: 5, 847.